がんの痛みの緩和ケアとは

緩和ケアとは、ただ単に癌による身体症状を緩和するだけではありません、身体症状の緩和だけでなく、心のケアも同時に行っていきます。当院の緩和ケアは、患者さんとご家族両方の生活の質を全体的に高めることを目的としています。

がんになると、身体や治療のことだけではなく、仕事のことや将来への不安などのつらさも経験します。緩和ケアは、がんにともなう心と身体のつらさを和らげることが可能です。

世界保健機関（WHO）は、

「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処（治療・処置）を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチである」と提言しています。

全身のどのような痛みや苦しみでも適切に治療すると、苦痛が軽減します。

苦痛が軽減してよく体が休まるようになると気力が回復するためか、不思議に主治医の言う余命を引き伸ばすことができたり、治療困難ながんであっても有意義に穏やかにご自宅で残りの生活を送ることができたりということがよくあります。

当院で行っている治療法

がんの主治医の治療を続けながら、痛みのコントロールが可能です。

内服や貼り薬による薬剤治療だけでなく、場合により神経ブロックも併用します。

種々の治療で痛みコントロールが不十分な場合や、消化管や皮膚からの薬剤吸収が悪くなってしまった場合には、携帯用精密持続薬剤注入器を使用して在宅での痛み治療を行っていきます。

※主治医の指示や鎮痛処置のために、持続的に点滴が必要な場合にも、訪問看護師や薬剤師と協力してご自宅でも点滴が続けられるように対処できます。

まずは電話でご相談ください。状況をよくお聞きし、どうすることがご本人やご家族に最善なのか一緒に考え、当院で治療可能な範囲であれば在宅治療の希望にも応じていきたいと思います。

痛み治療についての不安

緩和ケアに用いる治療方法に不安を感じる方は少なくないでしょう。ここではいくつかの疑問に対してお答えしていきます。

質問：痛み止めの薬（鎮痛薬など）は身体に悪い？

痛み止めの薬は適切に用いれば身体に悪影響を及ぼさず、日々の生活状況を改善させることが可能です。

質問：モルヒネを使ったらどうなる？

モルヒネなどの麻薬は適切に処方や服用をした場合、依存はほとんど起こらず強い鎮痛効果が期待できます。現代の治療目的での処方や服用では、廃人をつくったり、命を縮めることはありません。麻薬系の薬を用いていて、痛みから解放され、日常の生活を送っている患者さんもかなりの数いらっしゃいます。

質問：モルヒネを使ってしまうとやめられなくなる？

モルヒネなどの麻薬を痛み緩和に用いても依存になることはありません。もちろん長時間使ったとしても心配はありません。麻薬を使う必要が無くなった場合も依存することなくやめることが可能です。

質問：緩和ケアは死が間もない人のためのもの？

がんの痛みを緩和する理由は、生活の質（QOL）を向上させるためです。決して死に近づいた患者さんのためだけのものではありません。生活をおびやかす、いやない症状がある場合は、ガンなどの病気の進行がそれほど進んでいなくても、緩和ケアを開始する必要があります。

緩和ケアは、がん患者のみではなく、あらゆる病気に罹っている方々が必要としている医療なのです。

治療の目標

痛みの緩和ケアで大事なことは、患者さんに応じた現実的で段階的な目標設定をすることが大事です。

〇最初の目標    　夜間の痛みを忘れる様にする

〇第二の目標    　安静にしていれば痛みを感じない状態の維持

〇最終的な目標　寝たり起きたり、身体を動かしたりしても痛みを感じない状態の確保